「いまこそ知りたいAIビジネス」 石角 友愛 (著)
こちらの本を拝読いたしました。
パロアルトインサイトのCEOで、グーグルでもAIビジネスに関わっていた著者が、
AIビジネスについて語ってくれております。
AIはアトムではない
特に日本人は、AIと聞いたとき「鉄腕アトムのような自立思考型のロボット」
「まるで人間のような思考をもつお友達」を想像してしまいがちですが、
そうではありません、というところからこの本の内容はスタートします。
私の解釈では、AIはアトムよりもスタンドに近いです。
特にしげちーのハーベストのような1つの指示を的確に遂行する、
業務のサポートをしてくれるのがAIです。
AIは仕事を奪うのか?
この本では、AIは仕事を奪わず、むしろ新たな仕事を想像する、と結論付けております。
2018年の書籍なので、そこから5年たち、AI周りの情勢も変わっていますが、
端的に言いますと、AIを使うことで発生するAIのお世話が必要になる、ということらしいです。
なぜAIを導入するのか
AIは業務効率化などで導入されることが最も多いと考えられているかと思いますが、
実際は、エキスパートが行っている仕事を、誰でも出来るようにする目的で導入されることが多いと述べられています。
本の中ではとある運送会社の配送管理の方の話が出てきますが、
一部のエキスパートが作成していた配送順路の作成をAIに任せることで、
業務の拡大が図れる、というのがAI導入の目的だったそうです。
価値のあるデータとそうではないデータ
アメリカでは、現在データをどんどんオープンにしていこう、という動きがあるのに対して、
日本では、データは自社だけの秘密と思って、大事に持ったまま使われていないことが多いようです。
オープンにしていれば、どういうデータが有用か、また、さらに必要なデータは何か、ということがわかるので、
無駄がなくなる、ということも面白い内容でした。
さらに、個人情報と一般データは一緒に管理しない、ということも
日本では意外と知られていないことかもしれません。
技術だけ開発して、製品開発は他社に任せる
本ではシリコンバレースタートアップや台湾のAIチップメーカーを紹介しています。
とあるスタートアップ企業では、
脳波を計測して、触らなくともイヤホンの操作ができる技術が開発され、
その技術だけを売って、製品を作りたい企業を募ったそうです。
プロダクト開発を自社で行わないことで、より多くの企業から製品が出て、技術の利用が広まるわけですね。
台湾のICチップメーカーは、
自社のチップを作ってどのようにスマホを作成するかの設計図を公開したそうです。
これにより、このチップを購入すれば、各国で安価に自国生産のスマホを作れるようになったのだとか。
確かにプロダクトまで作成するよりも効率的です。
プロダクト開発に日本の勝機あり
このような技術を使って、日本式魔改造で商品を作るのが、
今後の日本の勝機につながる可能性があるのかもしれません。
小型化、軽量化に加え、正確さが日本製品の売りですので、
日本にこそ商品を作ってほしいと考える企業は多いのかもしれません。
大企業よりも、意思決定の早い町工場が作れるようになると面白いですね。
全体的に
ChatGPTの登場で、世界的にAIに対する興味関心が高まり、焦りも大きいと感じる。
少し古い内容ではあるが、AIビジネスを知るうえで読んでおいて損はない本だと思う。